霞、食べてます。

映画の感想やネット購入商品の感想を書きながら、考える練習をします。

祈りの幕が下りる時

 東野圭吾の小説を映画化した最近よくあるパターン。感動作と言いたいところだけれども、ほど遠い。最後の真相映像で、感動的な音楽にだまされて涙を流しそうになるが、それは、映画がよくできているからであって、実は、「祈りの幕が下りる時」というドラマには涙を流していない。それは、東野圭吾が人間に敬意を払っていないからだ。

 ガリレオシリーズとか、初期の東野作品には、まだ謙虚さが見られた。私は人間がよく分からないから、トリックを中心とした推理小説を描きますので、読んでやってください、みたいな感じがあった。だが、調子に乗ってこんな作品を描くと、いくら、映画人たちの力量があっても、人の心をトリックのように解き明かす東野作品は、人間としての涙が流れる感動は生まれる余地はない。

 小説家、東野圭吾知名度にすがった映画を作ってしまったわけだが、映画人、俳優陣には敬意を表す。よくこれだけ心の入っていないストーリーを感動作風に仕上げたものだ。阿部寛松嶋菜々子小日向文世、他圧巻の俳優陣たちはなかなかなものだ。是非、次は監督が作りたい映画に出演してやってくれ。

 ちなみに、wowowの作品解説の出演者に、小日向文世の名前を伏せるあたりは、よく、東野圭吾陣営と話し合いができているのかな、と感心したりした。少なくとも、犯人が松嶋菜々子だと推測できたときには、まだオチは想像できなかった。

星を追う子ども

 新海誠監督の「君の名は。」に至るまでの習作。風の谷のナウシカ天空の城ラピュタ、トトロ、等々ジブリの影響を思い切り浴び、隠しもしない潔さ。これはあそこ、これはあそこと、いちいち指摘できる。ストーリーも安易で画質もナウシカ並み。2011年の作品なのに、予算が少なかったのだろうか?習作は模倣から始まるのだから無理はないか。にしても、パロディ映画を見るくらい苦笑いがつきないが、真面目に作っているのが笑えるというか、笑いもさせないというか、とにかく痛々しい。

 だが人間の真の憎々しさは、監督の予期以上に、そしてジブリにはない部分として演歌調に捲し上げる。そして、逆にこの映画にオリジナリティを持たせ、[君の名は。」誕生前の卵子が漂っている。

彼女の人生は間違いじゃない

 瀧内公美主演の震災原発もの。と言い切るのが間違っているような映画。R15にしとくのは勿体ないが、彼女に脚光を当てればそうするしかない。ただ、当てなければ、震災原発もの、と括られる・・・。よくある戦争周辺映画や震災周辺映画と違うところは事実だということ。いや、フィクションかもしれないが、容易に事実の中の虚構だと想像がつくところ。そして当然、ドキュメント映画でもないということ。ものが壊れる過程は目で見えるけれど、心が壊れる過程を、震災というすぐ隣の事実をきっかけに、目に見えるように表現するのに、彼女に当てられる光は必要だったということか。

 R15にしないような映像で仕上げることが可能なら、東京電力や政府のお偉方にぜひ読んでほしいのは、その映画を全国の中学生に必須の授業として視聴させることが条例として決まったローカル新聞記事かな。

 回りくどくなってしまった、が、忘れる人が出始めた震災の、原発の本当の怖さを思い出すしみじみとした作品。

 

勝手にふるえてろ

松岡茉優主演。綿矢りさ原作。とりあえず、イメージを覆すハッピーエンド。ただ、そこに行き着くまでのワイディングロードの描き方が秀逸。かなり病んだ感じに捉えられる箇所も多いが、現代の病巣を抉るような綿矢作品を、コメディ仕立てで綴る監督の力はただならぬものを感じる。

ジョンウィック チャプター2

引き続きゲームのような人殺しアクションが続くが、前作よりコンチネンタルホテルの存在感が増した。ただ許せないのは、余りにストレートに次回作ありの終わり方をしたところ。見るに値しない映画ではないゲーム。

ジョンウィック

キアヌリーブス主演。痛快アクションというか、ゲームのうまくできた回を実写化したような中身のない作品。ただひたすら殺し合っているだけ。いや、主人公は死なないので、殺しているだけ。