霞、食べてます。

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祈りの幕が下りる時

 東野圭吾の小説を映画化した最近よくあるパターン。感動作と言いたいところだけれども、ほど遠い。最後の真相映像で、感動的な音楽にだまされて涙を流しそうになるが、それは、映画がよくできているからであって、実は、「祈りの幕が下りる時」というドラマには涙を流していない。それは、東野圭吾が人間に敬意を払っていないからだ。

 ガリレオシリーズとか、初期の東野作品には、まだ謙虚さが見られた。私は人間がよく分からないから、トリックを中心とした推理小説を描きますので、読んでやってください、みたいな感じがあった。だが、調子に乗ってこんな作品を描くと、いくら、映画人たちの力量があっても、人の心をトリックのように解き明かす東野作品は、人間としての涙が流れる感動は生まれる余地はない。

 小説家、東野圭吾知名度にすがった映画を作ってしまったわけだが、映画人、俳優陣には敬意を表す。よくこれだけ心の入っていないストーリーを感動作風に仕上げたものだ。阿部寛松嶋菜々子小日向文世、他圧巻の俳優陣たちはなかなかなものだ。是非、次は監督が作りたい映画に出演してやってくれ。

 ちなみに、wowowの作品解説の出演者に、小日向文世の名前を伏せるあたりは、よく、東野圭吾陣営と話し合いができているのかな、と感心したりした。少なくとも、犯人が松嶋菜々子だと推測できたときには、まだオチは想像できなかった。